ヨーロッパがミネラルウォーター先進国であるワケ
ヨーロッパ(EU加盟国)の統一基準の厳しさはおわかりいただけたと思うが、それにしてもなぜ、ヨーロッパでは「ナチュラルミネラルウォーター」に対して、これほどまでに細かい基準を設けているのだろうか。
それは、基本的にミネラルウォーターを「水道水の代用品」として考えている日本人と、「健康のために飲む水」と捉えているヨーロッパ人の、意識のちがいではないかと思われる。
日本人が水と健康の関係を真剣に考えはじめたのはごく最近のこと。10年ほど前までは、飲み水イコール水道水と考えるのが普通だった。井戸水や湧き水などの”生水”は、そのまま飲むと病原菌に感染するおそれのある危険な水と教えられ、こうした微菌を殺菌消毒した水道水こそがおいしく安全な”飲み水”と信じてきたのである。
一方ヨーロッパの人々は基本的に(イギリスを除いて)水道水をあまり信用していない。それはヨーロッパの水道水源の多くが河川水であるのに、海のない内陸の国や都市では下水をそのまま水源である河川に流してきたからだ。上流にある都市が流した下水の混ざった河川水を、下流では水道に用い、また下水を流す、そうしたことを繰り返しているうちにどんどん水道の品質は低下してゆく。だから水道水はもちろん生活用水ではあるけれど、そこに”おいしくて安全”という認識は希薄だ。また、かつてヨーロッパを危機に陥れたペストやコレラなどの伝染病の主な感染源が河川水であり、その記憶が今も消えないことも、河川水を水源とする水道水への不信に繋がっていると考えられる。
ゆえにヨーロッパ人にとって、高いお金を出してミネラルウォーターを買うことは特別なことではない。むしろ、おいしくて安全で健康にいい水が高いのはあたりまえと考えている。だからこそ、高いお金を払うからこそ、その品質と効能にはこだわるのだ。
先に述べたように、ここ数年の問に「健康のためにミネラルウォータフを買う」という人も加速度的に増えてきている。だが、これまで水道水を信じて飲み続けてきた日本人にとって、1本が200円もするミネラルウォJ夕ーは高価なものというイメージがまだまだ根強い。だから日本ではそのミネラルウォーターがどういう個性や特徴を待った水かということよりも、値段の安さやブランドイメインでどの水を買うかを決めている、という傾向がある。
しかし、品質にこだわるヨーロッパ人は「ミネラルバランスが良くおいしいから買う」「科学的に健康にいいと証明されているから買う」といった能動的な理由でミネラルウォーターを求めている。だから、源泉が保護され、微生物学的にも化学的にも安全で、科学的にその効能が認められている、手つかずの無殺菌の水でなくては信用されない。
もうひとつ、ヨーロッパでは「ナチュラルミネラルウォーター」は”生きている水”と考えられている。無殺菌、無除菌であるということは水の中に細菌が生きているということであり、それをそのまま飲むということは、それらの生菌を体の中に摂り込むということだ。
日本人は味噌や柏豆の中に人体に有益な細菌が生きていることを知っているのに、こと水については必要以上に細菌をおそれる傾向にある。
しかし、有害な細菌の代名詞ともなっている大腸菌でさえ、本当に有害なのは「毒素原性大腸菌」や「組織侵入性大腸菌」など限られた種類だけであり、そのはとんどが安全で、ビタミンの合成を助けたり、他の病原菌の侵入を防いだりするぶに玉菌”なのである。そ
もそも人間の大腸には常時1億個もの大腸菌が棲んでいるのだから、生菌イコール有害と決めつけるのはまちかっている。
その点、ヨーロッパでは、それが有害な菌でない限り、それを自然のまま肉体に摂り入れることこそが重要と捉えている。そうでなければ、チーズやヨーグルトの乳酸菌をそのまま摂取しようという発想は出てこない。殺菌処理をするのはまさに生きている水を殺す行為であり、死んだ水を「ナチュラルミネラルウォーター」とは認められない、というのがヨーロッパの考えなのだ。
もちろん、無殺菌の「ナチュラルミネラルウォーター」は、同時に細菌の自然増殖という問題点もはらんでいる。
いかなる細菌であっても1ミリリットルあたり1億個を超えれば腐敗が始まるといわれている。それが無害な細菌であったとしても、開校して菌が空気に触れれば増殖が始まる。だから無殺菌の水を開校して数週間から数か月、室温のまま放置すれば、腹痛や下痢をひきおこしかねないはど細菌が増殖する可能性は否定できない。つまり無殺菌の「ナチュラルミネラルウォーター」は”生鮮品”であると理解したはうがいい。
生鮮品、つまりなま物であるからには、開栓したあとはすぐに飲むか、あるいは冷蔵庫で保存することが前提となる。そのルールさえ守れば問題はない。
逆に、加熱して殺菌したミネラルウォーターであれば安全かといえば、決してそんなことはない。
殺菌した水は、ボトリングしたその時点ではもちろん無菌状態であるけれど、開校して空気に触れてしまえば、空気中の雑菌に感染し、増殖する可能性がある。まして開栓した容器に直接目をつけて、ラッパ飲みなどすれば、たちまち口内の細菌類が水に伝染し、増
殖をはじめる。間栓後のことだけを考えれば、それが無殺菌であろうと殺菌した水であろうと条件ははとんど変わらない。だから、殺菌ミネラルウォーターと無殺菌ミネラルウォーターに安全面での差異はないといえる。
日本でミネラルウォーターの消費が飛躍的に伸びているのは間違いないが、平成13年(2001)の国民一人あたりのミネラルウォーターの年間消費量のデータでは、フランスの141.6リットルに対し日本はわずか9.8リットル。比較からいえば、日本人が買うミネラルウォーターの量はまだまだフランスの14分の1に過ぎない。それはどの量のミネラルウォーターを日常的に飲んでいるヨーロッパ人が、ミネラルウォーターに対して、厳しく、うるさいのはあたりまえである。ヨーロッパがミネラルウォーターの先進国であるとすれば、まだまだ日本は発展途上の段階。正確な情報は不足しているし、行政サイドのミネラルウォーターへの対応や扱いにも迷いがうかがえる。
だが、少しずっではあるが、日本でも消費者白身がそのニーズに合わせてミネラルウォーターを選択し、購入するようになってきている。国産ミネラルウォーターの中に加熱殺菌からフィルター濾過(除菌)に処理方法を切り替えるところが増えていることや、かつては「おいしくない」と敬遠されがちだった硬水が「ミネラルが豊富だから」という理由で消費量が増加してきているのは、そのあらわれだろう。
- なぜ日本では水を殺菌しないといけないのか
日本の清涼飲料水は厚生労働省の「食品衛生法施行規則」および「食品、添加物等の規格基準」に従って生産されている。ミネラルウォーターもずっとこの基準に忠実に製造され、他の清涼飲料水と同様に殺菌処理が行われてきたのだ。 - ヨーロッパがミネラルウォーター先進国であるワケ
ヨーロッパ人にとって、高いお金を出してミネラルウォーターを買うことは特別なことではない。むしろ、おいしくて安全で健康にいい水が高いのはあたりまえと考えている。だからこそ、高いお金を払うからこそ、その品質と効能にはこだわるのだ - ヨーロッパのミネラルウォーター基準は
ヨーロッパ(EU加盟国)における「ナチュラルミネラルウォーター」の規定は、1... - 日本でのミネラルウォーターの歴史
ミネラルウォーター=水割り用の水というイメージを覆したのが、昭和58年(1983)の『六甲のおいしい水』の登場である。洋酒メーカーではなく、食品メーカーである「ハウス食品」が一般家庭を対象にして発売した、この"日本初の家庭用ミネラルウォーター"の誕生は、まさに革命的な出来事であった。『六甲のおいしい水』はそのネーミングのわかりやすさ、翌59年の全国的な水不足など、様々な要因によってシェアを拡大、名水ブームの嚆矢となった。 - ミネラルウォーターとは?
日本のミネラルウォーターに関するガイドラインでは、天然のままの水でなくても、その成分にミネラルをほとんど含まない水でも、"ミネラルウォーター"として販売することが認められているからである。 そう、日本においてはミネラルウォーター、イコール天然水のことではない。